
ルイス・カーン
建国記念の日、久しぶりに渋谷に映画を観に出かける。
映画館は建築家・北山恒氏設計の出来たて渋谷シネマコンプレックスQ-AX。
(円山町なので東急本店通りからのアプローチをお薦めする。)
■「マイ・アーキテクト - ルイス・カーンを探して」
第76回アカデミー賞ノミネート作品

バングラディシュ国会議事堂
建築に携わる者であれば誰もが知っている建築の巨匠「ルイス・カーン」。
その愛人との間にできた息子ナサニエル・カーンが、11歳の時死別した父の生き方を追うドキュメンタリー・ヒューマン映画である。
1974年3月、ペンシルヴェニア駅で一人の男性の死体が発見される。パスポートの住所などが消されており安置所に3日間も放置される。世間は後になって新聞でそれがルイス・カーンであることを知る。
カーンの死、カーンの生き方、カーンの建築、カーンの人間関係を、この映画監督でもある息子が記憶と取材を続けながら明らかにしていく。
正妻の他に2人の愛人を有しそれぞれに子供を設けた。カーンの事務所スタッフの家庭はみな多くが、その純粋な建築追求の犠牲となっていく。ユダヤ人としてのプライド、建築家としてのプライドを最後まで全うする人生を送る。建築作品の単なる紹介作品ではなく、カーンを中心とした人間模様から写し出された建築が非常に興味深いものになっている。
その建築家の残した建築にその魂を見出せないわけがない。光・建築・精神の絡み合った見事な結晶はこれからも多くの建築家や人々の心に残っていくことだろう。
建築への希望を与えてくれる貴重な作品のひとつになることだろう。
ルイス・カーンの素材への敬意と賛美(ペンシルバニア大学での講評会にて)をひとつ紹介しておこう。カーンが煉瓦に問いかける。
「君は何になりたい?」
すると煉瓦は、
「アーチになりたい!」
カーンは、
「アーチは金がかかるから、コンクリートのまぐさでやるけどいいか?」
煉瓦は、
「アーチがいい」
という。
http://www.myarchitect.jp/日曜日はこれまた久しぶりにレンタルDVDを借りて自宅鑑賞。
先週、建築家の椎名英三さんがポルシェに乗って、わが事務所に遊びに来られた。その楽しい会話の中で「芸術家たるもの、観ておかなくてはならない作品」とお薦めだったのがこの映画。
■「バベットの晩餐会」
1987年のデンマーク映画作品
1987年アカデミー賞優秀外国映画賞。

小ささな漁村で11人の静寂な時間が流れていく。
2人の姉妹、そして訳あってメイドとなったバベット。
数少ない村への訪問者とその姉妹、村の住人、そしてバベットたちが、時間軸と空間軸の中で交錯していく。
「貧しい芸術家はいません」
というバベットの言葉。(このあといろいろと重要な言葉が続くがあえて割愛。映画でご堪能あれ!)
人生を豊かにする術(すべ)、自分自身が生きていく上での身のおき方、演出する術、また前述がまわりの人たちを幸せにしていく有り様が、最後のシーンで凝縮され映し出される。
音楽家パパン、将軍ローレンスの言葉も聞き逃してはならない。
晩餐会シーンも素晴らしいが、その表現されているものに感動するだけでなく、奥に秘められたメッセージの重さを噛み締めて味わいたい作品である。