待ってました!奥田英朗の精神科医・伊良部先生シリーズ第3弾「町長選挙」。
「イン・ザ・プール」「空中ブランコ(直木賞受賞)」の続編である。

なんで今回もこんなに痛快なんだろう!
いつもながら主人公の伊良部先生の素頓狂な治療?には思わず拍手を送らざるを得ない。
今回前半は、最近世の中を騒がせた実在人物を登場させ、より一層具体的なイメージできるところが特に面白い。
ライブファストのアンポンマンっていったら誰だかすぐ分かっちゃうよね!
時の権力者がいつものようにズルズルと伊良部ワールドに引きずり込まれ、本来の自分からかけ離れた姿で演ずるはめになって、精神の悩みを自然解決させていくのである。
僕はいつも奥田作品を単なる娯楽小説とは受けとめておらず、現代の歪みを問題提起してその解決方法を指南してくれている小説だと感じている。つまり人間がちょっと悩んだ時の気持ちのもっていき方のような‥‥‥。
この今の社会、仕事をしていても、遊んでいても、なんかストレスが溜まりやすくなっていると思いませんか?
「病は気から」と言いますが「気は病から」とも言えます。からだの調子がすぐれなければ、悪い方悪い方に考えて、結局アリ地獄のような極地まで追い込まれて、気が滅入ってしまうってことないですか?
パソコンだって、メールだって、ブログだって、楽しいのが大半でしょうが、ときたま嫌になることもないですか?。人間関係も目に見えないところで意外とストレスとなっているかも。
奥田のこのシリ-ズ本は、弱りかけた現代人の活力源、エネルギ-源みたいなところがあって、とてもお気に入りなのです。
もちろん元気な人はもっと元気になれます!
ひとりで静かにほくそ笑みながら読んでみてください。
電車に乗りながらだと吹出してしまうシーンがありますのでご注意!

アンポンマンのモラルと品格が上記の本でちょっと話題になったところで、もうひとつ今ベストセラーになっている話題作「国家の品格」について一言。
作者はお茶の水女子大学教授で数学者、作家・新田次郎の息子でもある藤原正彦。
日本が世界で唯一の「情緒と形の文明」であると言い切る作者。
「論理より情緒」「英語より国語」「民主主義より武士道精神」などいろいろな提言をこの本の中でしている。歯切れのよい文章とちょっと右翼的な思想が見隠れするが、良く読んでみると自分もこのくらいのことは感じていたよ!という内容でもあるのだ。この本を読み終えた時に、新たな発見があったかな?とちょっと首をかしげたくなったのだ。
「国家の品格」というほどでなく、「日本人としてのプライドと道徳について」くらいのタイトルの方が良かったのかもしれない。画期的日本論?‥‥ではない!
人間そして社会においてはバランスが大切だといつも僕は意識して生活している。よって前述の「論理より情緒」など極化してしまうと、地球人としてのバランスが崩れ、文明が逆に衰退していきそうな気持ちにさえなってしまった。
「情緒より論理」「国語より英語」「武士道精神より民主主義」となってもなんの不思議も違和感も感じないと思いません?

そこで狭いヴィジョンの「国家の品格」を読むんなら、もっとヴィジョンが広がる私の「座右の書」である1冊をご紹介。
オーストリアのノーベル賞受賞の動物学者コーランツ・Z・ローレンツが著わした、
「文明化した人間の八つの大罪」。
第1章 生きているシステムの構造の特徴と機能の狂い
第2章 人口過剰
第3章 生活空間の荒廃
第4章 人間どうしの競争
第5章 感性の衰滅
第6章 遺伝的な頽廃
第7章 伝統の破壊
第8章 教化されやすさ
第9章 核兵器
第10章 まとめ
上記のコンテンツで人間の危機と崩壊のシステムを明示しながら、人類回復への普遍的な道を示してくれる。
現在では古典的になりつつあるが、その内容には今読み直しても感銘するものがある。
ということで関係のなさそうな本が3冊。
でもどこかで繋がっている接点を感じ、ダラダラとしたためてみた次第です。
「町長選挙」と「文明化した人間の八つの大罪」はお薦めの2冊です!