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ちょっと御岳渓谷まで

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木立に囲まれた玉堂美術館

・・・「別に工夫無し」
近代日本画の巨匠・川合玉堂の晩年の言葉である。
死の瞬間まで、美しい日本の姿を探し求め、描き続けた画家。
玉堂の晩年の14年間を過ごした場が、ここ青梅の御岳渓谷。
アトリエを構え、毎日毎日スケッチブックを持っては、清流、山々、樹木、魚などあふれんばかりの自然に自らを同化させ、筆を走らせていたという。

『玉堂美術館』
玉堂の数々の日本画、デッサン、アトリエ(復元)、貴重な玉堂のフィルムなどを見ることができる。建築と石庭の設計は、和風デザインをモダン建築に築き上げた建築家・吉田五十八(よしだいそや)である。清流(多摩川)がそばを流れ、大きな樹木たちに包まれ、遠くに吊り橋をのぞむそのローケーションは絶句する程である。玉堂のフィルムを見てその筆の運びに驚いた。迷いがない!筆の動きが早い!構図がしっかりしている!と一瞬のうちにその才能を目の当りにすることになる。さらに展示室の中にある日本画は言うに及ばず、特に感銘したのが、16才の時のデッサンの数々。小鳥や草花の詳細な描写の才能はずば抜けている。まるで和紙から小鳥が飛び抜けてきそうな感覚にさえなる。草花はそよ風で揺れ動くかのように感じてしまう。それはそれは不思議な別世界に巻き込まれることになる。

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美術館の中にある石庭

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復元された玉堂のアトリエ

・・・「書かずに描く」
玉堂の日本画には川のうねり、海の波、空の雲、民家に積もる雪や吹雪く雪などいろいろな光景が描かれるが、彼の「白」の部分については筆をおかないのだ。つまり紙の白い素地を残し、まわりを描くことによって、今まで見えてこなかった「白」(雪、波など)が自然に浮き出てくるのだ。油絵であれば白の顔料を用いるところを、玉堂は敢えて何も手をつけることなく「白」を描くことになるのである。その「白」の部分が実は絵の中で意味を持っている部分だから、この手法にはとても興味深い。全ての「白」は動きを持っていることに気付く。川の動き、波の動き、吹雪く風など、表現の難しいところに玉堂の「書かずに描く」という手法が存在する。
何より最初の言葉が心憎いではないか!
・・・「別に工夫無し」

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「吹雪」(昭和25年) 白い雪と吹雪く光景がまさに「書かずに描く」

川合玉堂の日本画の多くは、山種美術館に所蔵されている。玉堂はまじめで謙虚。そして筆まめ。玉堂の才能と人柄を見い出した山崎種ニ(だから山種美術館っていうんですね!知りませんでした)は、疎開先にも食料を送るなど支援を続けた一番の玉堂理解者だったのである。ということで有名な日本画は山種美術館で鑑賞することをお薦めするが、ここ玉堂美術館でまず彼の生活背景、生活環境を感じてから彼の作品に触れる方がいいと感じた。きっともっと深い理解と日本画へのイメージを膨らませることができるからだ。

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美術館に隣接する画廊レストラン「いもうとや」。こんな感じで自然を楽しみながらお食事

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奥多摩やまめの押し寿司。美味!

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美術館の前から対岸をのぞむ。木造の古い旅館が目にとまる

またここ御岳渓谷には足を運ぼうと帰り際に思う。
こんなに都会に近い場に、こんな大自然を感じることができるなんて夢のよう。いつも見ている二子玉川の多摩川も上流ではこんな清流の姿だなんて想像もしてなかった。カヌーを漕いでいるひと、吊り橋からカヌーを覗きこむひと、ロッククライミングするひと、マウンテンバイクで大きな岩を渡り走っているひと、いろんなひとがいるけど、みな清流のとどまることない1/fのゆらぐ音によってかき消され、映像だけが自分の目に写り、なんとも言えない心地よさを与えてくれる。そんな場がここ御岳渓谷なのである。

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清流の上流をみる。カップルがカヌーを練習中。向こうの橋の右手がもう青梅線・御岳駅

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多摩川にかかる吊り橋。結構揺れるもんだ

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吊り橋から下流をのぞむ。まさに渓谷!

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東京からは中央高速道八王子ICでおり、国道411を北進すること約45分。
途中より杉木立の吉野街道にてアプローチ。圏央道からのアプローチも便利

[ 2007/05/15 09:50 ] トレッキング・旅 | TB(0) | CM(14)
ご無沙汰しております。
本当にここは良いところですよね。山間の河原が大好きで、このような景色を見るとなぜか『なつかし』気持ちになり、胸がきゅんとなり、いやされます。なぜだろう・・・(笑)
それにしても立派な石庭ですね~
[ 2007/05/15 13:08 ] [ 編集 ]
Architectさん

カテゴリー別に色々な事を教わり、驚き、美味しい物、料理教室まで大変楽しみにしております。

今日もまた、私もここに旅に行った気分にさせていただきました。

ありがとうございます。
[ 2007/05/15 15:51 ] [ 編集 ]
いやぁ~
こんな風景を見るのは久しぶりで
日本の情緒に感動しています!

とっても綺麗なところですね。
[ 2007/05/15 16:28 ] [ 編集 ]
まず写真の緑が春らしく綺麗でいいですね~。奥多摩(?)って昔まだ東京にいる時に素通りして素敵だな、と思ってたけど、その後一度も行けない場所でした。綺麗だな。東京って車あるとかえって不便だと思ってたけど、こういう素敵な場所も案外近くにいっぱいあるんですね。
白、つまりネガティブスペースは画家にとっては、ポジティブスペースやラインよりも重要だったりするんですよね。ところで私はたいてい油ですが、それでも白を塗らない白い部分(といっても油が染みないためにジェッソというのをキャンバスには塗りますが)もありますよ。白い絵の具でもいっぱいあって、基本的にはタイタニアム、フレーク、ジンクと3種類あります。この3つの白は柔らかい白だったり眩しい白だったり、人の肌の色にいれる白でも自然に近くなる白、ならない白と様々です。白って、絵の具では凄く微妙な違いで面白い色のひとつでもありますです。
[ 2007/05/15 16:57 ] [ 編集 ]
な私にも「ホンモノ」の自然が必要かも知れない。
緑、そして水、、清々しい気分を味わえます!
thanx!
[ 2007/05/15 16:57 ] [ 編集 ]
まさに新緑の季節に訪れたい場所のひとつでしょうねー。渓谷も、川の水がとてもきれいなことがわかりますね。

玉堂さん、私は名前すら知らなかったのですが、素敵な絵ですね。絵のことは本当に何もわからないのですが、「好き」ということだけは言えますb
[ 2007/05/15 18:29 ] [ 編集 ]
こんばんは。ご無沙汰です(?)
aceroさん、ここに行かれたことあるんですね!
秋川渓谷も通り過ぎたことはあるんですけど、ここ御岳渓谷は初めてでした。
ほんとに癒し空間と感じられます。
きっと清流の流れる音、樹木の緑、青い空、それだけで人間はリフレッシュできることを実感できました。仕事を忘れて(吉田の建築はしっかり見ましたが)こういう時間を作ることが大切なんでしょう。
aceroさんもお忙しいでしょうけどたまにはこんな処もいいですよ!。Ghibliくん、心配ですが元気になったらまた一緒に行ってみてくださいね。
[ 2007/05/15 21:08 ] [ 編集 ]
こんばんは。
そんなにたいそうなものではありませんが、お楽しみいただければ光栄でございます。(笑)
でもここには美術館が目的だったのですが、こんなに素晴らしい自然と共存しているとはつゆ知らず、感動してしまった次第です、ハイ。
またマッティーさんもQPを走らせて行ってみて下さい。エンジンが焼けるような坂道もないですから安心ですよ!(爆)
[ 2007/05/15 21:12 ] [ 編集 ]
Hello!今ちゃんさん!
どうしてもこの写真は日本の光景ですよね。
懐かしいことでしょう。
なんとも言えない空気が日本らしいですよね。とても不思議なことです。きっとそちらにも大自然があると思いますが、もっと広大なイメージです。
日本人の遺伝子が頭に組込まれているのは間違いなさそうです。(笑)
[ 2007/05/15 21:16 ] [ 編集 ]
Hello!MIHOさん
新緑の葉の香りを深呼吸してリフレッシュして参りました。
ちょうど家から1時間半くらい。クルマでもとてもアプローチしやすい処でした。
思ったよりひとも多く、自然を相手にいろんなことをしているひとが多いのにびっくりしましたよ。でもその行動も自然に溶け込んでいるのも良く判りました。

玉堂の白に関しては美術館で発見したのですが、MIHOさんのようなアーティストにとっては大切な色なんでしょうね。玉堂のその描き方が僕にとってはすごく不思議だったのです。ゲシュタルトでいう「図と地」の概念が狂わされた感じなのです。図を書くのではなく、地を描いて図が浮き上がるこの方法って、絵画ではよくあることなんでしょうか?(←無知でしょ)
とにかくその手法に惚れ込んで、帰ってきた次第です。
[ 2007/05/15 21:28 ] [ 編集 ]
こんばんは。
そうですか、煮詰まっているようじゃ、ここは一走り、オープンカーで行っちゃいましょう!!!
自然はホントに人間を癒してくれます。実感!

僕も窓をフルオープンで走ってそよ風をいっぱい感じてました。おかげ様で思いっきり効率的に花粉(中国からの黄砂かな?)を吸い込み過ぎたようで、完全に鼻と目がイカれてます。睡眠不足になる程の花粉症状態です。(涙)
僕はオ-プンカーには向いてない身体かもね?(爆)
[ 2007/05/15 21:34 ] [ 編集 ]
こんばんは。
やっぱり人間、自然に触れなきゃいかんに~。(←浜松弁、あってる?)
目で新緑を感じ。耳で川のせせらぎと鶯の鳴声を感じ、鼻で新鮮な空気を感じ、舌でヤマメを味わう(?)、これほど幸せなことはありませんね。

僕も川合玉堂の名前しか知らず、たぶん実際の絵に触れるのは初めてなんですが、絵を前にするとすごく感じるものがあったわけなんです。日本画であんまり感動する機会が少ない自分がかなり興奮気味にいろいろとビンビンと感じ、見入ってしまったわけなんです。ちょうど先週のNHK日曜美術館で紹介されていたので、行ってみようと思ったのですが、吉田五十八の建築にも触れられたし、大自然にも触れられたし、3拍子揃った「ちょっと」した旅となったんですよ。
まだまだ日本のイイ処、見つけていきたいものですね!
きっと、もちさんも玉堂の日本画、好きになると思いますよ。
ぜひ一度ほんものをご覧下さいマセ。
[ 2007/05/15 21:46 ] [ 編集 ]
奥多摩へ行ってみたくなりました。
この御岳渓谷あたりが一番景色がいいですね。周辺には記念館や美術館が多数ありますし。
それで帰りは青梅市街で昭和の懐かしい雰囲気を楽しむというのが私のパターンです。

それにしても新緑とビアンコの対比が見事です。

[ 2007/05/15 23:40 ] [ 編集 ]
おはようございます。
そうそう、美術館がいっぱいあるんでした!
今回は玉堂美術館のみに焦点を絞ってましたので、ここにしか行きませんでしたが、いろいろ興味ある方は楽しめると思いますよ。とにかく自然を思いっきり深呼吸してみて下さいね。
ビアンコのQPはポツンと置かれてますが、下の駐車場はクルマでいっぱいでした。
ほんとは吉野街道の高い杉並木でQPを撮影したかったのですが、流石に渋滞しそうだったので、遠慮しておきました。もっとダイレクトに自然の中にQPをいれたかったのですけどね!(笑)
[ 2007/05/16 09:52 ] [ 編集 ]
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