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『プラチナデータ』


冒頭からどっぷりと東野ワールドに惹き込まれる。そのあたりはいつものように秀逸。
このミステリー小説の路線を見極めながら、ワクワクしながら本の頁を軽やかにめくっていく。
でもこの東野小説への多大なる期待感が少しでも裏切られると、パンパンに膨らんでいた風船がどこに孔が開いているのかわからないうちに萎んでしまう(こともある)、、、

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DNAデータによって管理された近未来の日本社会。個人は国家によってDNA情報を掴まれ、永遠にその国家体制からの脱却も不可能となってしまった世の中。あなただったら堪えられるだろうか?。
ミステリーはそのDNA管理データを構築した天才女性数学者とその兄の殺人事件から始まる。この事件、国家機密であるが故に捜査はトップシークレット、そこで登場する刑事が今回の主人公。

ここで東野が仕掛けたのが主人公の人格、、、「二重人格(解離性同一性障害)」。あの有名な『ジキル博士とハイド氏』のようなものである。読者の犯人へのベクトルの向きを混乱させる因子であるが、果たして功を奏すか結末はいかに、、、

いつも東野小説の特徴として、僕の好きな「医学ミステリー」、そして科学的解決を爽快に展開する福山雅治が映画で演じた「湯川博士シリーズ」、また『新参者』のような人情ミステリーの「加賀警部シリーズ」。今やキャラクターがはっきりとした東野小説の中での記念書き下ろし小説の位置づけで、ちょっと宙に浮いた感が歪めない。いつもの鋭いツッコミ、勢いが希薄に感じたのは僕だけだろうか?。もちろん小説にのめり込ませる実力は天下一品!。その娯楽性と身近な文章表現は、彼の右に出る者は少ないかと思うのも事実。

テーマが「人間の心」だけに、この小説の持つパワーとテーマ発信が中途半端になってしまった。読んでいれば、その中に鏤められた東野の心の囁きを感じることができるのだが、もっとダイナミックな展開になっていた方が、彼らしさをアピールできるのではないかとも素直に思った。
いつもなら本を読み終わったあとに、自分なりにテーマを再考して自分の考えをまとめてみるところだが、今回はそこまでには至らなかった。
でも娯楽性という意味で言えば成功している小説であるので、各自でまたいろんな感じ方をしてみるのもいいことだと感じる。本の面白さはあくまでオノオノですから、、、

[ 2010/08/12 14:28 ] | TB(0) | CM(0)
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